EV、電気自動車の今後の動向、そして電気自動車ってホントにエコなの?というのが気になっていた中で、最近読了した本がその疑問にとてもヒットしたので学んだことを記事で整理しておきます。
その本がコチラ。2021/10/11にワニブックスさんから発売されています。
この本の著者は元内閣官房参与の加藤康子(かとうこうこ)さん、自動車経済評論家の池田直渡(いけだなおと)さん、モータージャーナリストの岡崎五朗さんです。
クレジットの最初のお名前は加藤さんになっていますが、本編は加藤さんが話を振り、そこに自動車業界に精通する池田さん・岡崎さんが詳しい話を語る、という構成になっています。
この本を読んで学んだことまとめ
この本を読んで感じたことを最初にまとめておきます。
①EV、電気自動車は必ずしもエコではない
②「本当に地球環境のためを想う」ならば、各国の事情に合った手段を選択すべき
③CAFE、LCAなどの「エコ」な思想は、地球のためだけではなく各国の思惑が入っていることを認識すべき
この他にも、全体的に対中国や国内の政治家不信の論調が垣間見えますが、そこについては私の記事では触れないことにします。
そもそもEVとは?HVやPHVとの違いは?
まず、EVとHV・PHVなどの違いについて解説します。
簡単に表現すると、以下のようになります。
●HV・・・ガソリンエンジンと、バッテリー駆動を使い分けて動く車
●PHV・・・HVのうち、バッテリーに直接充電できる車
●FC・・・水素を電力に変換してバッテリーに充電し、そのバッテリー駆動で走る車
●EV・・・バッテリー駆動のみで走る車。充電必須。
●e-fuel車・・・ガソリンの代わりにCO2や水素から成る合成燃料で走るエンジン駆動の車。
「EV推進の罠」を読んで学んだことについて
①EV、電気自動車は必ずしもエコではない
これは何を言いたいかと言いますと、「EVのバッテリーを製造する際に多くの電力を消費する」ということです。
なぜかというと、バッテリー製造の際に品質確認及び充電のために、充放電をする工程があります。
EVは、HVなどと異なりバッテリーが充電されていないと、納車後走ることもできません。
そのために、工場出荷時は充電された状態で出荷されます。が、この充電、「一般家庭の一週間分の電力」に相当します。。
EV一台当たりに一般家庭1週間分の電力を消費していたら、かなりの電力を消費することはご理解頂けると思います。
また当然ですが、家庭でも充電ステーションでも、充電に使う電力を生産するのに、火力発電であればCO2が発生します。
対してガソリン車は、成熟産業であり製造の際もCO2放出も極限まで抑え込まれているため、現時点ではEVよりも環境に対して有利ということになります。
EVで十年近く走行しないとトータルCO2がガソリン車に勝てないという試算もあります。
もちろんEV生産における技術的ブレークスルーがあれば別ですが、現時点での環境への影響は、ガソリン車に対して優位とは言えない状況です。
②各国の事情に合ったエコ実現の手段
同じ電気自動車を生産するにしても、日本とヨーロッパ諸国で造るのでは環境負荷が異なります。
化石燃料由来の発電が約75%の日本に対して、フランスでは9%、スウェーデンでは2%です。
これが何を意味するのかと言いますと、「日本には電力を消費する電気自動車、すなわちEVは不向き」ということです。
では風力や太陽光などのクリーンエネルギーの割合を増やせばいいかというと、国土面積の多くが山林が占めている日本ではそれは容易ではありません。木を切り倒して太陽光パネルを置くのも本末転倒です。
日本で言うと洋上発電が有利そうですが、これはまだ実験室レベルでも成功していないそうです(2021年10月時点)。
日本はこれまで培った技術で製造・使用時ともになるべく環境負荷の低いHV・PHVなどを主力に、e-fuelなどのCO2を増やさない燃料も視野に入れていくのが得策かと思います。
また、政府による”安全な”原子力発電所の増設も、個人的には必要なのではないかと思っています(もちろん、賛否あるのは理解したうえでですが)。
③CAFE、LCAなどの「エコ」な思想は、地球のためだけではなく各国の思惑が入っていることを認識すべき
まず用語を解説します。
●LCA・・・Life Cycle Assessmentの略称で、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)での環境負荷を定量的に評価する指標。
一つ目の「CAFE」規制は、製造時は関係なく走行時のCO2排出量で厳しい規制をかけています。
2020年の目標では、事実上従来のガソリンエンジンでは達成できない目標まで厳しくなっています。世界でもトヨタだけが達成している状況と言われていますが、この背景にはVWの排ガス検査不正が絡んできています。
もともとディーゼルでCAFE目標を達成しようと目論んでいたVW、そして欧州勢は、排ガス不正発覚によりディーゼルに頼ることができなくなってしまったために、EVつまり電気自動車に頼らざるを得なくなりました。
しかし、自動車のバッテリー製造・販売は中国、韓国、日本というアジア勢が席巻している状況です。つまり、EVを作ると欧州ではなくアジアにお金が落ちることになります。
そこで欧州勢は「LCA」という概念を持ち出してきました。
これにより、製造に多くの電力を消費する電池はクリーンエネルギーの多い欧州で造ったほうがよい、となるわけです。
CAFEもLCAも、一見環境のため、地球のためと聞こえはいいですが、実は上述したような思惑、カラクリが潜んでいることを念頭に置いてニュースを見るとよいでしょう。
まとめ;事実を正しく認識して、周囲に流されずに自分の意見を持とう
ここまでEVにまつわる様々な話を記載しましたが、共通して言えることは「事実を正しく認識する」ということがとても大事であるということです。
マスメディアは視聴率やアクセス数優先になってしまいがちなので、必ずしも正しいニュースを伝えているとは限りません。
こういった本も含め、いろいろなチャネルからの情報を積極的に取りに行くことで、多角的に事象を捉え、事実を正しく認識し、周囲に流されない自分の意見をしっかり持ち、行動していくことが大切です。
なお、この記事ではまだまだ書き切れていない「EVを取り巻く事情と思惑」について知りたい方は、ぜひこの本をお手に取ってみてください。
必ずあなたの人生の糧になる本と信じています。
それでは、最後までお読み取りいただきありがとうございました。